診療方針
診療に対する考え方
患者さまは何らかの問題があるため医療機関を受診します。まず患者さまのお話(訴え)をよくお聞きすることが大切であると考えています。そうすることにより必要以上の検査を行わずに済ませられることも少なくありません。
また、特に初めてや受診間隔が空いた患者さまに対しては、訴えがない部位の診察(不必要な検査をするということではありません)もできるだけ行うということを心掛けています。耳鼻咽喉科は目で見て耳・鼻・のどを、また触診で頸部(クビ)を診察します。そうすることにより隠れている病気が見つけられることもあります。病気は進行しないと症状が出てこない場合も珍しくありません。特に悪性腫瘍(癌)なども初期には何も症状がないことは珍しくはありません。このように患者さまのお話をよくお聞きし、症状・訴えがなくても幅広く耳鼻咽喉科領域の診察を定期的に行っています。
感冒(かぜ)について
感冒(かぜ)の症状としては、咳(せき)、鼻閉(鼻づまり)、鼻汁(はなみず)、咽頭痛(のど痛)、嗄声(声がれ)などが代表とされます。このような症状に対しては耳鼻咽喉科が扱うところであると考えています。ていねいに耳鼻咽喉科の領域を中心に状態をチェックするよう心掛け、その結果に応じて、適切な処置・投薬などを行います。
抗菌薬の適正使用、薬剤耐性菌について
2017年以降に厚生労働省より「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版・第二版」が公表され、ここでは具体的に日常的に一般的な感染症に関して、また抗菌薬(細菌に対する抗生物質)の適切な処方について説明しています。この2つの手引きの主な対象は基礎疾患のない成人および小児です。その中では、耳鼻咽喉科領域で細菌感染が原因と考えられる急性副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性中耳炎に対しては、多くの場合に第一選択とされるのはアモキシシリン水和物(ペニシリン系抗生物質製剤)とされています。さらに、感冒(かぜ)やインフルエンザなどのウイルス感染症に対して抗菌薬が無効であること、抗菌薬が必要ないことが示されています。また、必要な抗菌薬を適切な量と期間、投与して細菌感染症を効果的に治療し、患者予後の改善を図ることが目的とされています。
抗菌薬の適正使用の観点からもう一つ大切なことは、不適切な抗菌薬の使用は薬剤耐性菌を生み出す可能性があるということです。細菌感染症と判断され投与された抗菌薬は、病気の原因となっている細菌だけでなく、さまざまな細菌に効きます。例えば抗菌薬を使うと、ヒトの腸にいる非常に多くの種類と数の細菌のうち抗菌薬が効く菌だけが死んでしまい、効かない菌(薬剤耐性菌)が生き残ります。生き残った薬剤耐性菌が増えてなんらかの感染症をおこせば、抗菌薬が効かない菌ですから、治療に困ることになる可能性が考えられます。どんなに注意しても抗菌薬を使うと耐性菌が生じる可能性があるので、抗菌薬を使う機会を本当に必要なときだけに絞り込み、必要のないときは使わないことが薬剤耐性菌対策にはとても大切とされます。抗菌薬には様々な種類のものが存在しますが、当院ではこのような考えに基づき、より適切な抗菌薬の処方を心掛けています。
自己の研鑽(けんさん)について
私が耳鼻咽喉科の医師になって、30年近くが経過しました。医学も日々進歩しており、耳鼻咽喉科の病気も医師になった当初と比較して、病気に対するその考え方自体が変わってきている場合も時としてあります。このようなことに対応するために日々、新しい知識を取り入れることを目指し、講演会や研修に積極的に参加するようにしています。
これまでにかかったことのある病気、現在治療中の病気(処方薬の内容を含む)、また、薬剤のアレルギー、妊娠・授乳の有無について
病気によっては、特定の薬を投与しない方がよい、あるいは投与してはならない(禁忌)病気もあります。また薬によっては別の薬と併用することによって相互作用(効果が弱まったり、あるいは強まったり、副作用が強く出たりすること)が起こることがあります。このようなことを起こさないためにも、他の医療機関から処方されている薬があれば、お薬手帳を持参ください。また問診表にこれまでにかかったことがある病気や現在治療中の病気をお書きください。また薬剤のアレルギーの有無を、女性であれば妊娠・授乳の有無もお書きください。